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気仙茶聞き書きおまけ編~気仙のお茶っこ飲み民俗学~

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カラスに豆腐をやる

・大根も土の中に入れたから。畑からすぐと穴掘って、高く土盛って。そして、なんだか、豆腐上げたんだよ。その上さ豆腐上げてカラスさ食わせんべって。あとのものをいたずらされねえように、豆腐を串さ刺して上げたもんなんだでば。正月前に。大根は穴さただ入れてた。そして、ネズミにいたずらされねえように、穴の周りに杉っ葉。取り口に置いた。(米崎町 Mさん)

・今の一丁の豆腐を四つくらいに切って、串にさして、味噌つけて焼いて、沼のほとりに並べて挿してね、「カラスカラス豆腐喰え」って、カラスさサービスしたんでねえべかね。農作物さいたずらしねえように、カラスさお願いなんじゃねえべかね。(米崎町 Sさん)

・豆腐、四角く切って、木さ刺してね、うちさ、田んぼの真ん中に祠があったでしょ。そこさ持ってって。何日にやったかそれは覚えてない。昔いろいろやりました。(竹駒町で育ったCさん)

(以上、米中仮設での聞き取り)
# by kesencha-minzoku | 2015-04-20 09:46 | 習慣・風習

ひして・ひすとい

ひして・ひすとい、もよくお聞きする言葉です。
ひしてでもやる。とか、ひすといなんかで終わらない。とか。
調べてみると、やっぱり古い言葉なのですね。

(意味)一日。一日中。

(用例)
・(手もみ茶づくりの時は)それを繰り返して三日くらいやんのさ。今は、ひしてで終わり。

(解説)ヒシテはヒストイともいいます。
気仙郡語彙集覧稿(以下「語彙集」という。)では、日一日という漢字表記を付しています。
終日。一日。ヒヒテともいうそうです。
隔日をヒシテオギ(日一日置)というとのこと。

ヒシテは日一日(ひひとひ)の語尾を落としてヒヒト、ヒヒテに変化して、更にヒシテ」に変化したといいます。
日一日(ひひとひ)の用例を、平安時代の「土佐日記」から挙げています。

日一日、が残っている言葉は、全国各地にあるようです。ちょっと検索しただけでも、鹿児島、対馬(長崎)、熊本、讃岐(香川)、伊予(愛媛)、栃木、宮城、など出てきます。
南の方では、隔日はヒシテガイとなるとのこと。
# by kesencha-minzoku | 2015-04-20 09:45 | 気仙語

ママ

「ここらのお茶は、畑でなく、ママに生えてるの」と、よく聞きます。はじめは、「ママって???」と思いましたが、すぐに、段々畑の斜面など、草の生えている畦畔や土手のことだとわかりました。実際、気仙のお茶の多くは、そういうところに生えていますので。

聞き書き集のミニ気仙語辞典から転載しましょう。

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◆ママ

(意味)畦畔。土手。

(用例)
・お茶畑―畑なかったんだから、ママだったんだから―
・ママは雨で崩れて。だからこんな急になったんだ。

(解説)語彙集には「草の生えている畦畔。草の生えている傾斜面のある土手。」とあり、用例を『万葉集』(一〇)の「石橋の間々に生ひたるかほ花の花にしありけりありつつ見れば」を挙げている。この場合の間々は崖の意といわれている、とのこと。
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ママ、は、万葉集まで遡る言葉なのですね。
盛岡あたりでは使わない言葉ですが、古い言葉が気仙には残っているのですね。
# by kesencha-minzoku | 2015-04-18 11:51 | 気仙語

羊羹のこと

(2015.1.8 北限の茶を守る気仙茶の会ブログより)
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陸前高田のお正月には、羊羹を手づくりして用意する、と、あちこちでお聞きしました。
お正月以外でも、冠婚葬祭や、何か人が集まる機会に、羊羹を作る方がいらっしゃることを知りました。

高田の方が作った、手づくり羊羹をいただいたことが何度かあるのですが、どなたの羊羹も、とてもおいしいのです!
実のところ、私は羊羹が苦手でした。手づくり羊羹をいただいた時、ものすごく大きく切り分けてくださって(ああとてもこんなに食べられない)と思ったのに、すっきりしたほどよい甘みと美味しさに、ぺろりといただいてしまったのでした。あんなにおいしい羊羹は、生まれて初めてでした!

この度、お正月にちなんで、手づくり羊羹のお話もいろいろお聞きしてみました。


〇今でも、小豆を作っている親戚は、羊羹を作っている。昭和30年代、結婚式、披露宴を家で行っていたあたりは、各家庭を回って作ってくれた職人さんがいた。よっかちんさんと言っていたね。(菊池司さん)


〇おばあさんが、正月用に、自家製のあずきを使って作った。主人の母も毎年作った。いろんな話をしながら、時間をかけてかき混ぜて、練りあげました。家の中で、糯米を蒸かす匂いと、あんこの匂いがまじりあっていたのが、年の暮れのにおい。今は、お正月、というのが、意味が薄くなっている気がします。昔は、時間をかけてごちそうを準備したもの。今は、いつでもごちそうが手に入るし、忙しくなってしまったね。(武蔵裕子さん)


〇年末から、こしあんを作って羊羹を作る。練炭の火にかけて、時間をかけて練り上げたね。練っている間は、ラジオを聞いたり、本を読んだりして過ごしたもの。今でも、電気ヒーターにかけて、作ります。(村上フミ子さん)


〇子供の頃、母がさらし餡を作っている時、間違って、揉みだした方を捨てそうになって、ものすごく母が焦っていたのを覚えている。(照井由紀子さん)


〇内陸から嫁に来て、おばさんの作る羊羹の美味しさに感激した。練るのは、力が要って大変なの。自分も作ってみたけれど、なかなかうまくできないものだっけ。(菊池文子さん)


〇羊羹ってお家でつくりませんか?たぶんこの辺りではどこの家でも作ったのではないかと思います。私の母は他県から嫁いできましたが、それでも子供のころ作ってくれて、あんこ好きの私は母の作る羊羹が大好きでした。隣のおばちゃんからもいただいたことありますし…。母を真似て私もたまーに作ります。手間がかかるので気が向かないとやりませんが。なんでも自分ちで作るのが当たり前・・・そんな時代だったもの。と皆さんお話されますので、羊羹くらいは作ったのではないでしょうか?(阿部裕美さん)



こうしてお聞きしてみると、ゆべし、は、お菓子屋さんで買っても、羊羹、は、今でも家で作る、という感覚の方が多いように思いました。
「羊羹ってお家でつくりませんか?」と逆に質問いただきましたが、うーん、私も実家でも、水ようかんは作ったことがあるけれど、羊羹は、ないですね・・・。いかがですか、皆様のところでは、「羊羹って、お家で作るもの」ですか??

陸前高田の家庭では、高い技術を伝承しながら、手間暇のかかる菓子を作ってきたのだなあ、と改めて感じ入ります。ゆべし・がんづき・羊羹を手づくりし、お茶も手もみし、その他さまざまな暮らしのことを、技術と知恵で作りながら生きていらしたのですね。そして、時間と愛情。とびきりおいしい羊羹が出来上がるのは、技術+時間と愛情を惜しみなく注いでいるからなのだろうなあと、改めて思います。

また、手もみ茶でもそうでしたが、それを専門にして家々に出向く職人的な人もいたのですね。興味深いです。


羊羹のお話と合わせて、高田の年越し、お正月のあたりのお話も教えて下さった方がありました。

〇羊羹、ゆべし、がんづきは、冠婚葬祭、盆正月の気仙のお菓子です。昔は自宅での手作りをしたものです。今は、お菓子屋さんのを買う事が多いと思います。どういう字を書くのかは解りませんが、「おようり」と言うようです。
この辺りは、おせちも無く、31日の、「年越し膳」が派手です。海の幸、川の幸、山の幸、それぞれ親戚との物々交換や、「詰市」5の市ですがその日に買って仕入れます。
お正月は、一関と同じ「餅膳」です。色々な味の餅を、たべます。お雑煮は引き菜といって、だいこん、ごぼう、ニンジンを千切りにして寒にさらし、雑煮にします。(戸羽初枝さん)
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仮設住宅でのお茶っこ会でも、羊羹のお話はたくさん出ました。

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・2015.2.25 米小仮設にて

まずザルで濾して、(ただ袋さ入れるとカスばり残るから)まずザルで皮とツユとにする。あのね、笑い話、ツユ捨てた人ある(笑)。皮ばりで羊羹なんねえのす~。
ツユはボールさ残っから。それを袋さ入れて、そうせばあんこが残るから。
ツユだけしぼって、羊羹こねる鍋さ、砂糖をとかすわけ。そいつさあんこ入れて。二時間ぐらい(練る)。

棒寒天。うるかしておいて、千切って、水いれておいて、弱火で、形なくなるまで、そこで初めて砂糖いれるんだよね。寒天は最初砂糖も何も入れないうちに溶かす。混ぜてしまっては、はあ、溶けない。ある程度、最低の水で溶かしてね。砂糖入れてしまうと絶対(ぜってえ)溶けねえ。

最後に塩、いれないの?最初っから入れると焦げやすいのね。塩は火ぃ止めてから。

(こちらの羊羹は、大きく切りますよね?)バットによる。

ザラメの方が、味が出る。2対1くらいで白も入れる。白だけでは甘み出ない。

・2015.2.25 米中仮設にて

Sさん こんな鍋で、7分目くらいのとろとろづう羊羹を、だいぶ煮詰めるからね。三時間もこうやって。長いヘラで。(ヘラが長いのは)熱いから。
バットさ流すでしょ。バットを、子供さこう揺すらせるの。うんと煮詰めるからどろっとなって固まって。こうして練って練って。

-県内いろいろ回っても、羊羹作るづうところはないですよ。

結局、小豆が採れるからね(でも、県北でもあるもの~小豆餅あるもの~)

一升の小豆の餡にね、寒天は六本。1本さ水2合。12カップ。そやって、それさ餡いれるとサラサラと。皿さ水おいてて、練ったへらのをたらすのね、たらした案がふやふやってふやけるとまだ早い。水に落って固まったらいい。ぐーっとかます。

自分が苦労して作った羊羹だから、どがどがとして切って、はいはいはいはい、とやんのは、悔しいの。歯ごたえがほしいの。バットの一本ずつを親戚さやんだよ。お客さんさ出す時、がっぱがっぱとこんなに切るの。そうするとね。あのぐらい苦労して。大事に扱ってもらいたい、って気があるの。他所さいくと、悪いけど、もっと柔い羊羹ある。

Yさん わたしそれも好きなの。

Oさん 砂糖多く入れるとさ、はしっこ白くなんの、あれが好きなの。
Yさん 私は寒天は溶かして絞ってからやんの。それからあんこ入れっから。
?さん 母のやり方だから。家々あんの。
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家々で、いろいろな作り方、いろいろな味わいがあるのですね!自分でも作ってみたくなりました。
# by kesencha-minzoku | 2015-04-15 13:17 | お菓子・料理

からすからす勘三郎

聞き書き集には、昔の年中行事で歌った唄なども採譜して掲載する予定です。
先日は、信頼するピアノ教師の知人と合流し、音源を聞きながら、記譜の確認などしてもらいました。

その中に「カラスカラス 勘三郎 あの山 火事だ 鳶口ぐって 走れ」という、夕方カラスに向かって歌った唄も収録したのですが、それをネットで検索していたら、佐賀県立図書館で、全く同じ歌詞で、メロディーが違う、歌の音源を公開していました!興味深いです。聞き書き集も、本当はところどころ、音声データで公開すればいいのかもしれません。

佐賀県立博物館のデータは、「からす勘三郎 火事」と検索してみたりすると、データベースにつながります。そして、音声で聴く事ができます!!(リンクフリーではないようなので、ご自身で見つけてみてください)
それにしても、佐賀県立博物館、すごい!

ところで「鳶口 ぐって 走れ」の「ぐって」の意味は、分かる方いらっしゃいませんか?
(全体的には、「火消し・消防の持つ「鳶口」を持って山火事を消しに行け、カラスよ」という意味合いだそうなのですが・・・)

・・・と、FBでよびかけたら、「ぐって」は「食って」、口にくわえて、という意味ではないか、という説が寄せられました。なるほど~カラスは鳶口を手に持っていくことはできませんからね。有力な説登場、という感じです。

他にも、解釈や説をご存じな方、是非教えてください!


それから、この歌詞は、全国的に歌われていたのでしょうか??
(今のところ、ネットで検索すると、佐賀県と、福島県会津で、この歌を歌ったというのが見つかりました)

求ム情報、です。
# by kesencha-minzoku | 2015-04-08 11:04 |